『万葉集』中、ヤナギをよむ歌
→シダレヤナギ
長歌
桃の花 紅色に にほひたる 面輪のうちに
青柳の 細き眉根を 咲みまがり 朝影見つつ をとめらが ・・・ (19/4192,大伴家持)
余以暫(たまたま)松浦の県に往きて逍遥し、・・・忽ちに魚を釣る女子らに値(あ)ひき。
花の容(かほ)雙(ならび)無く、光(て)れる儀(すがた)匹(たぐひ)無し。
柳の葉を眉の中に開き、桃の花を頬の上に発(ひら)く。・・・
(5/853,読人知らず。「松浦河に遊ぶ序」)
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短歌
烏梅(うめ)のはな さきたるその(園)の あをやぎは かづら(蘰)にすべく なりにけらずや
(5/817,小貳粟田大夫)
あをやなぎ 烏梅とのはな(花)を を(折)りかざし
の(飲)みてののちは ち(散)りぬともよし (5/821,笠沙弥)
烏梅のはな さきたるそのの あをやぎを かづらにしつつ あそ(遊)びくらさな
(5/825,土氏百村)
うちなび(靡)く はるのやなぎと わがやどの 烏梅のはなとを いかにかわ(分)かむ
(5/826,史氏大原)
はるやなぎ かづらにを(折)りし 烏梅のはな
たれ(誰)かうか(浮)へし さかづき(杯)のへ(上)に (5/840,壹岐目村氏彼方)
(以上5首、730年正月13日、大宰府における「梅花の歌32首」のうち)
打ち靡く 春立ちぬらし 吾が門の 柳のうれ(末)に 鶯鳴きつ (10/1819,読人知らず)
朝な旦な 吾が見る柳 鶯の 来居て鳴くべき 森に早なれ (10/1850,読人知らず)
春霞 流るるなへに 青柳の 枝喙(く)ひ持ちて 鶯鳴くも (10/1821,読人知らず)
霜かれの 冬の柳は 見る人の 蘰(かづら)にすべく も(萌)えにけるかも (10/1846,読人知らず)
浅緑 染め懸けたりと 見るまでに 春の楊(やなぎ)は もえにけるかも (10/1847,読人知らず)
春去れば 垂れ柳の とををにも 妹は心に 乗りにけるかも (10/1896,柿本人麻呂)
春楊 葛山(かづらきやま)に たつ雲の 立ちても座(ゐ)ても 妹をしぞ念ふ
(11/2453,読人知らず)
百礒城(ももしき)の 大宮人の 蘰ける 垂柳は 見れど飽かぬかも (10/1852,読人知らず)
大夫(ますらを)が 伏し居嘆きて 造りたる しだり柳の 蘰せ吾妹 (10/1924,読人知らず)
しなざかる こし(越)のきみらと かくしこそ
やなぎかづらき たぬ(楽)しくあそばめ (18/4071,大伴家持)
吾が背子が 見らむ佐保道の 青柳を 手折りてだにも 見むよしもがも
打ち上る 佐保の河原の 青柳は 今は春べと なりにけるかも
(8/1432;1433,大伴坂上郎女「柳歌二首」)
梅の花 取り持ちて見れば 吾が屋前(やど)の 柳の眉し 念(おも)ほゆるかも
(10/1853,読人知らず)
梅柳 過ぐらく惜しみ 佐保の内に 遊びし事を 宮もとどろに (6/949,読人知らず)
遊ぶ内の たぬ(楽)しき庭に 梅柳 を(折)りかざしてば おも(思)ひな(無)みかも
(17/3905,大伴家持)
梅の花 垂れ柳に 折り雑へ 花に供養(まつ)らば 君にあはむかも (10/1904,読人知らず)
青柳の 糸の細(くは)しさ 春風に 乱れぬい間に 視せむ子もがも (10/1851,読人知らず)
我が刺せる 柳の糸を 吹き乱る 風にか妹が 梅の散るらむ (10/1856,読人知らず)
春雨に も(萌)えしやなぎか 烏梅の花 ともにおく(遅)れぬ 常の物かも
(17/3903,大伴家持)
うらもなく わがゆくみちに あをやぎの
は(張)りてた(立)てれば 物も(思)ひづ(出)つも (14/3443,読人知らず)
春の日に 張れる柳を 取り持ちて 見れば京(みやこ)の 大路念ほゆ (19/4142,大伴家持)
君が往き 若し久に有れば 梅柳 誰と共にか 吾が蘰かむ (19/4238,大伴家持)
こひ(恋)しけば き(来)ませわがせこ(背子) かき(垣)つやぎ(柳)
うれ(末)つ(摘)みか(枯)らし われた(立)ちま(待)たむ (14/3455,読人知らず)
やなぎこそ き(伐)ればは(生)えすれ よのひと(人)の
こひ(恋)にし(死)なむを いかにせよとそ (14/3491,読人知らず)
あをやぎの は(張)らろかはと(川門)に な(汝)をま(待)つと
せみど(清水)はく(汲)まず たちど(立処)ならすも (14/3546,読人知らず)
わがかつ(門)の いつもと(五本)やなぎ いつもいつも
はは(母)がこ(恋)ひすす なり(業)ましつつも (20/4386,大伴家持)
おやま田の いけ(池)のつづみ(堤)に さ(刺)すやなぎ
な(成)りもな(成)らずも な(汝)とふたりはも
(14/3492,読人知らず。ヤナギの挿木をして、つくかつかないかで占いをした)
あをやぎ(青柳)の えだ(枝)きりおろし ゆ種蒔き
忌忌(ゆゆ)しききみ(君)に こ(恋)ひわたるかも
(12/3603,読人知らず。柳の枝を苗代田の水口に挿して神を祝った)
青柳の ほつ枝よ(攀)じとり かづら(蘰)くは 君が屋戸にし 千年ほ(寿)くとそ
(19/4289,大伴家持)
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枕詞「さしやなぎ(刺し柳)」(挿木したヤナギは根を張りやすいので、「ね」にかかる。)
・・・ 刺し楊 根張梓(ねはりあづさ)を 御手(おわみて)に 取らしたまひて ・・・
(13/3324,読人知らず) |
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